T20(Think20)Japanの課題
インドのシンクタンクはこう見る
インドの有力シンクタンク、ゲートウェイ・ハウス(Gateway House: Indian Council on Global Relations 本部・ムンバイ)のホームぺージにT20(Think20)Japanの課題に関するリポートが掲載されました。
筆者は、ゲートウェイ・ハウスの研究部門のアシスタント・マネジャー、Purvaja Modak氏です。
インドは2022年にG20の議長国となるだけに、「G20のアイデア・バンク」と呼ばれるT20の活動にも積極的に参加しています。インドは全国に500以上のシンクタンクがあり、米国に次ぐ世界第二位の「シンクタンク大国」。その中でゲートウェイ・ハウスは2009年に設立された新興勢力ですが、国際関係専門の研究所として活発に外交政策の分析と提言を続けています。
以下に邦訳を掲載します。
「東京からのリフレクション(熟考)」
2018年12月18日
ゲートウェイハウス アシスタント・マネジャー 地経学研究員
Purvaja Modak
2018年12月4、5日に東京でT20(Think20)のキックオフ会合が開かれ、グローバル経済のガバナンスの争点に取り組むG20諸国のシンクタンクによる2019年の研究プロセスが始まった。筆者はオブザーバーとして参加した。
日本は2018年12月1日にアルゼンチンからG20議長国の役割を引き継いだ。日本は世界的評価がある独自のシステマティックな手法で、T20をリードしており、2019年の研究を進めるため、10のタスクフォースを立ち上げた。2018年のG20議長国、アルゼンチンから持続可能な開発、国際金融アーキテクチャー、気候変動、そして仕事の未来などの課題を受け継いだほか、インフラ・ファイナンスの経済効果や人口高齢化といった新たな争点も加えた。
T20プロセスを主導するために、日本政府は、吉野直行所長が率いるアジア開発銀行研究所(ADBI)に事務局を設置した。この役割において、ADBIは三菱UFJ銀行によって設立された著名な国際金融シンクタンクである国際通貨研究所(IIMA)と、もう一つの名高い外交政策シンクタンクである日本国際問題研究所(JIIA)と協力している。
日本のT20プロセスがユニークなのは、タスクフォースを共同で運営するため、他の多くのシンクタンクや大学と提携していることだ。例えば、三菱総合研究所(MRI)の研究者が気候変動のタスクフォースに関わり、経済産業研究所(RIETI)が貿易投資や中小企業関連のタスクフォースを率いている。また、国際協力機構(JICA)研究所が持続可能な開発のタスクフォースを率いている。東京大学、一橋大学、京都大学、慶應義塾大学の学者も共同議長などを務めている。キックオフ会合には、一流のシンクタンクや国際機関から約200人の参加があり、知的対話に貢献した。
山田賢治・外務大臣政務官は開会の基調講演で、日本が貿易、持続可能な開発目標(SDGs)、そして高齢化対策に必要なヘルスケア・ソリューションに焦点を当てることを強調した。また、G20諸国にパリ協定の実施に取り組むよう訴えた。T20プロセスをリードするアジア開発銀行(ADB)の中尾武彦総裁、JIIAの佐々江賢一郎理事長、IIMAの渡辺博史理事長ら他の基調講演者も、専門家たちに歓迎の意を表し、G20の政策思想を深めることに貢献するよう求めた。
「T20:G20におけるシンクタンクの役割」と題されたキックオフ会合は、G20が具体的な成果を欠いてその有効性が疑問視されていることを考えると、非常に適切なものだった。専門家たちは、T20のアプローチと役割に方向転換を求めた。これまでにもG20の指導者に技術的なインプットを与えてきた。しかし、包括的なグローバル・ガバナンスの問題をG20が議論するため、議題をまとめ、G20の「アイデア・バンク」としての役割を再構築しなければならない。このアプローチが加盟国に合意を形成し、代々の議長国に議題の継続性をもたらす。そうでなければ、T20は早晩、的外れなものになるかも知れない。
初日は、河野太郎外務大臣主催のレセプションで幕を閉じた。河野大臣はスピーチで参加者を歓迎し、SDGs、気候政策、そしてグローバリゼーションによる不平等に対処する必要性についての日本の課題を改めて強調した。
タスクフォースは、初日の会議のサイドラインと2日目の分科会で集まり、年間の作業計画を作成した。国際金融アーキテクチャーに関するタスクフォースの分科会では、共同議長らはフィンテック、資金フローの管理、持続可能な金融、IMF改革や金融システム全体の規制といった分野から、今年の議題を優先し、選択した。IMF改革や世界規模のセーフティネットなど差し迫った懸案事項と同様に、持続可能な金融やフィンテックなど将来を見据えた問題についての議論も大きな必要があることがわかった。この分科会は、議論されたすべてのアイデアについて政策立案者のためのブリーフを書く取り組みについて全会一致の決議をして閉会した。
日本は力強くT20を発足させ、グローバル・シンクタンクの間では今後半年間の仕事についての興奮がみなぎっている。彼らの努力は、2019年5月のT20 Japan 2019本会合で頂点を迎える。
ゲートウェイ・ハウスは2014年以来T20の活動メンバーで、2019年1月28日にインドのムンバイで日本の関連シンクタンクと共同でT20の会議を開催する準備をしている。ゲートウェイ・ハウスは2015年トルコ、2016年中国、2017年ドイツ、2018年アルゼンチンの各議長国の元でT20関連の会議を催した。ムンバイの会議はグローバルな金融システムがとのように持続可能な開発目標や、フィンテックの台頭、中小企業のニーズ、グローバリゼーションへの地政学的課題などに協調していけるか、焦点を当てる。これらの問題はG20の核心であり、日印双方にとって重要だ。G20諸国の有力シンクタンクの研究者、インドの外務省、財務省官僚、ムンバイ拠点の金融機関代表や経済界リーダーらが参加する。
そこでの議論から発したアイデアは、ゲートウェイ・ハウスが共同議長を務める「安定と発展のための国際金融アーキテクチャー」のタスクフォースで政策ブリーフにまとめられ、日印政府に提出される。インドは2022年にG20議長国に就任する準備が始まっており、独自の課題策定に向けて努力するなか、T20は従来と同様にインドにとって重要となる。ゲートウェイ・ハウスは将来のT20開催と2019年の日本の研究課題に貢献することを熱望している。